遺言書の種類とそれぞれの効力
相続と聞いたら遺言書を思い浮かべる人も多いと思いますが、実はこの遺言書には厳格な形式性が要求されます。そのため、遺言が無効になるケースも散見されます。そこで遺言書とはどのようなものかを含めて遺言書の種類と効力について見ていきましょう。
遺言には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3つの種類があります(民法967条)。しかしながら、3つの種類の遺言書があるといってもその内容と効果はさほど変わりません。遺言書が3種類あるのは被相続人の意思の厳格な尊重を果たすためであるからです。
まず自筆証書遺言とは、文字通り遺言者(被相続人)が自筆で書いた遺言書になります。この遺言書が有効となるためには遺言者がその全文・日付・氏名を自筆し、これに印を押す必要があります(民法968条1項)。なお財産目録を遺言書に添付する際には自筆でなくても遺言書は無効にはなりません(同条2項)。
次に公正証書遺言とは、公証人が遺言者の口授をもとに公正証書として作成する遺言書になります。自筆証書遺言は簡単ではあるけれども、紛失する可能性や変造される可能性があります。それに対して公正証書遺言はそのような心配をしなくてもいいわけです。公正証書遺言が有効となるためには民法969条に規定されている方式に従わなければなりません。
①証人2人以上の立ち会いがあること(1号)、②遺言書が公証人に遺言の趣旨を口授すること(2号)、③公証人が遺言者の口述を筆記した文を遺言者および証人に読み聞かせたり閲覧させること(3号)、遺言者と証人が署名・捺印をすること(4号)、⑤公証人が正しい手続きを踏んだものであることを記し署名・捺印をすること(5号)が要件となります。
最後に秘密証書遺言とは、遺言者が封じた遺言書を公証人が公証したものです。この秘密証書遺言は民法970条1項に定めてある方式に則って行わなければなりません。まず、①遺言者がその証書に署名・捺印をして(1号)、②その証書を封じ証書と同じ印で封印すること(2号)、③遺言者が公証人1人および証人2人以上の前に封書を提出して自己の遺言書である旨と氏名・住所を申述すること(3号)、そして④公証人が日付と遺言者の申述を封紙に記載した後署名・捺印をすることが必要になります。
遺言書には①相続人になりうる人(推定相続人)のうち、被相続人に対して虐待や侮辱を加えるなど非礼なことをした人を相続人から排除すること(民法893条)、②相続分に関してその指定および指定の委託(民法902条)、特別受益者の相続分に関する指定(民法903条3項)、③遺産の分割に関して分割方法の指定および指定の委託(民法908条)をすることができます。
つまり、被相続人にはかなり広範な自由な裁量があると言えるでしょう。とはいうものの、たとえ遺言書が有効であったとしても、兄弟姉妹以外の相続人(子や配偶者、直系尊属)に対しては「最低限の取り分」である遺留分(民法1042条1項)があり、遺留分にあたる遺産は必ず相続されなければなりません。
遺言の効果としては、遺産が指定した分に相続人に帰属することになりますが、遺言書に詳しく定めていなかった場合は遺産分割協議を行う必要があろうかと思われます。
以上が遺言書の種類とその効力ということになります。3種類の遺言書はどれも遺言書として同じ効力を有していますが、手続きの煩雑さが異なります。一般的に、複雑な手続きを必要とする遺言書の方が時間的・経済的なコストはかかりますが、遺言者としての意思を確実に反映させたいのならば自筆証書遺言は避けた方がいいかもしれません。また、自筆遺言証書の場合は、遺言が見つかったらすぐに家庭裁判所に提出する必要があります(民法1004条1項)のでこの辺りも注意しなければならないです。
相続でお困りの際には、司法書士はたけやま法務事務所にご相談ください。当事務所は、埼玉県さいたま市、川口市、上尾市、越谷市を中心にご相談を承っております。
相続の他にも、不動産登記、会社・法人登記、債務整理など様々な業務を取り扱っております。ぜひお気軽にお問い合わせください。お待ちしております。
当事務所が提供する基礎知識
-
相続放棄が認められな...
相続人は、被相続人の一身専属権以外の財産や権利・義務の一切を承継することができます。被相続人の残した財産がマイナスで相続人が「遺産を承継したくない」と考えた場合、相続放棄をすれば承継せずにすみます。今回は相続放棄が認めら […]
-
一般的な会社設立・商...
商業登記とは、法務局の商業登記簿に会社の情報を記載する手続きのことをいいます。会社は設立後登記をすることで法人格を得ることができます。そのため、設立登記は最も重要な登記です。登記には、目的や商号、本店及び支店の所在場所、 […]
-
遺言書の作成方法
遺言書には、普通方式遺言として「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、作成方法も異なるため、遺言を残そうとする方の意思に沿ったものを自身で選択する必要があ […]
-
相続放棄を行うには
相続放棄とは、相続の開始によって一応生じた相続の効力を相続人が拒絶することです。まさに読んで字の如くという感じですね。相続放棄はどういう場合になされるかというと、例えば被相続人が借金をしていたりして債務を負っており、相続 […]
-
遺言書の検認手続き
遺言書を発見した場合、相続人であっても、勝手に封を開けることは法律上認められておらず(民法1004条)、家庭裁判所で「検認」という手続きを受けなければなりません。 ■検認とは?検認とは、相続人に遺言書の存在・内 […]
-
相続財産の使い込みを...
相続財産は、被相続人が死亡した際に、全てがすぐに相続人が利用できるようになるわけではありません。例えば、被相続人が銀行などに預けていたお金である預貯金債権は、遺産分割の対象です。遺産分割の前であっても、相続人は一定額につ […]
よく検索されるキーワード
-
- 相続 さいたま市 司法書士 相談
- 遺言書作成 川口市 司法書士 相談
- 相続登記 上尾市 司法書士 相談
- 任意整理 埼玉県 司法書士 相談
- 相続 埼玉県 司法書士 相談
- 会社設立 埼玉県 司法書士 相談
- 自己破産 全国対応 司法書士 相談
- 遺言書作成 埼玉県 司法書士 相談
- 不動産相続 さいたま市 司法書士 相談
- 不動産売買 川口市 司法書士 相談
- 商業登記 越谷市 司法書士 相談
- 不動産相続 川口市 司法書士 相談
- 相続 越谷市 司法書士 相談
- 任意整理 全国対応 司法書士 相談
- 相続登記 全国対応 司法書士 相談
- 自己破産 上尾市 司法書士 相談
- 会社設立 さいたま市 司法書士 相談
- 遺産分割協議 全国対応 司法書士 相談
- 任意整理 川口市 司法書士 相談
- 生前贈与 埼玉県 司法書士 相談
司法書士紹介

債務整理、相続のご相談、不動産登記、企業法務などでお役に立ちます。
司法書士はサービス業であると認識し、親切で丁寧な対応、分かりやすいご説明を心掛けております。
一人で悩まずお気軽にご相談ください。
- 司法書士
- 畠山 勇輔(はたけやま ゆうすけ)
- 所属
-
- 埼玉司法書士会所属登録番号:第1241号
- 簡裁訴訟代理等関係業務認定番号:第601557号
事務所概要
名称 | 司法書士はたけやま法務事務所 |
---|---|
代表者 | 畠山 勇輔(はたけやま ゆうすけ) |
所在地 | 〒330-0846 埼玉県さいたま市大宮区大門町3-22-3 三協大門町ビル4F |
TEL・FAX | TEL:050-3628-6873 / FAX:048-782-7239 |
対応時間 | 平日 10:00~19:00 (事前予約で時間外も対応可能) |
定休日 | 土・日・祝 (事前予約で休日も対応可能) |